生成AIを使うコンテストは増えていますが、「公式ポスターに採用する」となると、著作権や既存作品との類似が大きな課題になります。
徳島県鳴門市では、令和8年(2026年)の「鳴門市阿波おどり」公式ポスターを、生成AI活用を条件とした公募で決定しました。
全国から251点の応募があり、最優秀賞作品が公式ポスターとして採用されています。
注目すべきは、見た目の審査だけでなく、プロンプト(指示文)の確認などを通じて、著作権リスクへの配慮を入れた点です。
地域イベントと生成AI、そして権利クリアの工夫がどう結びついたのかを整理します。
「AIを使って面白いものを作る」だけでなく、「公式に使える状態まで持っていく」ための工夫が、今回のポイントです。
何が実施されたのか
主催は、鳴門市・鳴門商工会議所・市うずしお観光協会などでつくる鳴門阿波おどり実行委員会です。
例年は地元の事業者やイラストレーターへ依頼していたポスターを、今回は一般公募に切り替えました。
しかも応募条件は「生成AIを活用して制作すること」です。使用ツールは自由で、人による加筆・編集も認められています。
募集期間は2026年5月11日から31日まで。1人あたり5点まで応募でき、個人だけでなく団体・法人も参加できました。
結果発表では、最優秀賞1点・優秀賞2点が選ばれ、最優秀賞作品が令和8年度の公式ポスターに採用されています。
最優秀賞にはギフトカード3万円分と特産品、優秀賞にはギフトカード1万円分と特産品が贈られています。
最優秀賞はどんな作品か
最優秀賞は、鳴門市在住のペンネーム「なぎほっぺ」さんの作品です。
市の発表によると、鳴門の象徴である渦潮、大鳴門橋、踊り子が一目で分かる構成と、生成AIを活かした迫力あるデザインが選考の決め手になったとのことです。
優秀賞には、阿波市の「たくあん」さん、阿南市の「タカシ」さんの作品が選ばれました。
公式ポスターは市内外の観光施設などにも掲出され、夏の阿波おどり(8月9〜11日開催)のPRに使われています。
うちわや手ぬぐいなど関連グッズの制作も進んでおり、ポスター単体ではなく、祭り全体のビジュアル展開の一部になっています。
なぜプロンプト審査が重要なのか
生成AIの画像コンテストで避けて通れないのが、著作権と既存作品への類似です。
日本の著作権では、既存作品と似ているだけでなく、その作品に依拠して作ったかどうかも問題になります。
そこで今回の取り組みでは、画像の見た目だけで判断せず、応募時のプロンプトを確認する仕組みが注目されました。
プロンプトを見ることで、
- 特定の既存作品やキャラクター名を指示していないか
- 模倣の意図が読み取れる指示になっていないか
- 応募者がどのようにAIへ指示し、表現を組み立てたか
といった点を確認しやすくなります。
あわせて、既存作品との類似を画像検索などで確認する運用も、権利リスクを下げる実務的な工夫として語られています。
応募要項では他者の権利侵害を禁止し、AI生成に伴う権利問題は応募者責任とする記載もありました。
つまり「AIだから自由」ではなく、「AIでも権利確認のプロセスを入れる」ことが前提になっています。
松江市のゆるキャラ制作が著作権リスクを理由に中止になった例などもあり、自治体が生成AIを使うときの緊張感は全国的に高まっています。
そのなかで、鳴門市は「使わない」ではなく、「確認して使う」側に振った点が特徴的です。
審査で見られたポイント
実行委員会の審査では、テーマ性・視認性・独創性などを総合的に見たとされています。
さらに報道では、鳴門らしさに加えて、AIへどれだけうまく指示を出せているかも評価対象になったと伝えられています。
これは、完成画像の美しさだけでなく、「プロンプト設計力」や「人による編集力」も含めて評価する考え方です。
生成AI時代のクリエイティブでは、ツールの操作そのものより、「何をどう指示し、どう仕上げるか」が差になることを示す事例とも言えます。
自治体・企業への示唆
この事例が示唆するのは、生成AIを「禁止」でも「無制限に許可」でもなく、条件付きで使う運用です。
- 生成AIの利用を明示的に条件化する
- プロンプトや制作過程を提出させ、依拠性を確認しやすくする
- 類似画像チェックなど、見た目の権利確認を併用する
- 権利問題の責任分担を要項で明らかにする
- 人による加筆・編集を認め、最終品質を担保する
自治体の広報物や企業のキャンペーンでも、同じ論点はすぐ出てきます。
特に公式ポスターのように広く配布・掲出する用途では、見た目のインパクトだけでなく、権利クリアの説明可能性が重要です。
「誰が」「どの指示で」「どの程度手を入れて」作ったかを残せる運用は、後から問題が起きたときの説明材料にもなります。
Webサイトや予約システム、SNS投稿まで一気通貫で展開するなら、デザイン権利と公開フローを最初からセットで設計しておくと安心です。
まとめ
鳴門市の生成AI活用ポスターコンクールは、伝統行事の魅力発信と、最新技術の実験を両立した取り組みです。
251点の応募から選ばれた作品が公式ポスターになり、AI画像が地域PRの正面に立つ事例になりました。
同時に、プロンプト確認などを通じて著作権リスクに向き合う姿勢は、今後の自治体・企業のAI活用でも参考になります。
Makoto Tejimaでは、生成AIを使ったコンテンツ制作やWeb・システム開発において、表現の工夫だけでなく、権利確認・運用ルール・既存システム連携まで含めて設計することを大切にしています。
イベント広報のデジタル化、生成AI活用の社内ルール設計、公式サイトや予約・告知システムとの連携など、目的に応じてご相談いただけます。